最強の不良と謳われた袴田くんと岸谷くんが揃ってしまったのが、最大の不幸だっただろう。
 彼らには何をしても及ばず、兎の彼が降参すると、田中くんも抵抗を止めた。そこへ現れたパトカーから降りてきた警察官が、岸谷くんではなく私を見て「また君か」と呆れた顔をした。知らぬ間にブラックリスト入りしていたらしい。今年だけで三件は事情聴取を受けているし、仕方がないと諦めるしかない。 田中くん達を引き渡すと、別の警察官が私達を品定めするように訝しげに問う。

「君たちが起こしたんじゃないよね? ……いや、バスジャックと聞いているけど、本当は君たちの喧嘩が大事になっただけじゃないかと思って」
「はぁ!? そんなこと――」
「ただの喧嘩だったら、それこそ君たちも罪になる。正直に言ってくれ」
「正直も何も、俺が通報した時に話した通りですって!」
「捕まりたくないからそう言っているんじゃないのか?」

 岸谷くんが何度説明をしても、警察官は疑い続ける。証拠として残りそうな写真や動画は撮っていないし、電話で聞こえてきた会話だけじゃ成立しないかもしれない。警察に目をつけられた時点で、信用は勝ち取れない。軽くあしらわれてしまう。今回ばかりは私も共犯にされているから、何を言っても無駄かもしれない。
 隣にいた袴田くんにいたっては最初からわかっていたかのように、冷静に話を聞いていた。頭ごなしに決めつけられることに何の疑問を持っていないわけではないだろうが、何度も同じ局面を経験していることから半分諦めているのかもしれない。

「あのね、君達は何度も警察の世話になっているんだから、そろそろ大人の言うことを――ん?」

 すると、さっきまで泣いていた男の子が鼻をすすりながら、警察官のズボンをぐいぐいと引っ張った。やけにムスッとした顔を可愛らしく思ったのか、警察官が屈み込んで聞く。

「どうしたんだい? 今大事なお話してるから……」
「ヒーローなんだよ!」