「……うるさい、うるさいうるさい! 結局はお前が助けなかったから、こんなことになったんじゃねーか!」
田中くんが顔を真っ赤にして殴りかかってくる。もはや怒りの感情に任せて拳を振るうしかできなくなっていた。
「お、おい!!」
袴田くんが仕方なしに構えた途端、運転席の方から慌てた声が聞こえてきた。
進行方向に目を向けると、信号機が赤に点灯しているにも関わらず、ボールを追いかけて女の子が飛び出している。横断歩道の中心でボールに追いついて、嬉しそうにしている顔がこちらに向けられる。歩道にいる通行人も慌てて車道に飛び出そうとしていた。
それを真正面で見ていた兎のお面の彼は、拳銃を突きつけていることも忘れて運転手に促す。
「ぶ、ブレーキ踏んで! 早く!」
「う、うわあああ!」
勢いよく踏み込んだブレーキが辺り一帯に響き渡り、バスが大きく揺れた。車内にいた乗客は必死に座席をしがみつく中、袴田くんは田中くんと兎をまとめて倒れないように床にしゃがませた。暴れる田中くんを抑えながらも揺れに耐える。
完全に揺れが止まった直後、外から女の子が泣き叫ぶ声が聞こえて顔を上げた。車道に飛び出した女の子は無事に歩道に戻され、母親の腕にしっかりとしがみついていた。見た限りでは怪我もしていない。バスの急停止は間に合ったらしい。
誰もが胸を撫で下ろす中、袴田くんが怒鳴った。
「――井浦ぁ!」
田中くんが顔を真っ赤にして殴りかかってくる。もはや怒りの感情に任せて拳を振るうしかできなくなっていた。
「お、おい!!」
袴田くんが仕方なしに構えた途端、運転席の方から慌てた声が聞こえてきた。
進行方向に目を向けると、信号機が赤に点灯しているにも関わらず、ボールを追いかけて女の子が飛び出している。横断歩道の中心でボールに追いついて、嬉しそうにしている顔がこちらに向けられる。歩道にいる通行人も慌てて車道に飛び出そうとしていた。
それを真正面で見ていた兎のお面の彼は、拳銃を突きつけていることも忘れて運転手に促す。
「ぶ、ブレーキ踏んで! 早く!」
「う、うわあああ!」
勢いよく踏み込んだブレーキが辺り一帯に響き渡り、バスが大きく揺れた。車内にいた乗客は必死に座席をしがみつく中、袴田くんは田中くんと兎をまとめて倒れないように床にしゃがませた。暴れる田中くんを抑えながらも揺れに耐える。
完全に揺れが止まった直後、外から女の子が泣き叫ぶ声が聞こえて顔を上げた。車道に飛び出した女の子は無事に歩道に戻され、母親の腕にしっかりとしがみついていた。見た限りでは怪我もしていない。バスの急停止は間に合ったらしい。
誰もが胸を撫で下ろす中、袴田くんが怒鳴った。
「――井浦ぁ!」