三日後の放課後、岸谷くんから送られた地図を頼りに、私はおんど食堂へ向かった。
 北峰高校から歩いて三十分ほどで着くと言われて進んでいくと、景色ががらりと変わった。駅前が整備されて建物が多くなった学校側に比べ、山が近いこの地域は開発途中なのか、昔ながらの木造住宅が並んでいる。
 しばらく道なりに歩いていると、「おんど食堂やってます」と書かれた看板が出ている一軒家を見つけた。取っ手部分が錆び付いている引き戸の向こうから、何やら賑やかな声が聞こえてくる。

 意を決して引き戸を開けると、子供からお年寄りまで、幅広い年齢層の人が集まって楽しそうに食事をしていた。食べ終えた子は空になった食器を持って返却台に戻して、奥のスペースで本を読んだり宿題をしたり、各々の時間を過ごしている。客の中には同い年くらいの学生もいて、顔や手に絆創膏が何か所にも貼られていた。

「いらっしゃい。そんなところに突っ立ってないで、入っておいでよ」

 目の前の光景に驚いていると、入口の近くにあるカウンターで作業をしていた男性に声を掛けられた。私より年は上だろうか、従業員の中でもオレンジ色のエプロンに違和感を覚えた。顔にかかった黒髪をかきわけ、耳にいくつものピアスホールの痕がある。

「んー……? 北峰の制服じゃん。久々に見たわ」
「えっと……」
「この食堂、町内会が配ってる食事券がないと利用できないんだけどある?」
「券……こ、これですか?」

 岸谷くんに渡された食事券を男性に渡すと、嬉しそうに目を輝かせた。

「これこれ。みっちゃーん、野菜定食一つよろしくー!」
「あいよー……あら、女の子じゃない! 遼ちゃんの妹さん?」
「違う違う。コ―ハイだよ。こっちの席使って。ごはんはお代わり自由のセルフサービスだから」

「あ、あの、もしかして」――と言いかけて、口元を人差し指で遮られた。意味深な笑みを浮かべて男性――近江先輩は言う。

「そんな急かしなさんな。腹が減ると戦ができないように、話をするのだって食べてからの方がきっと、アンタも落ち着いて話せるだろ。ゆっくりしていきなよ、井浦チャン」