「あの時こうしておけばよかった」と後悔することは、生きていれば何度も経験する。
 例えば、受験勉強のために買っておいた牛乳パックのミルクティーを、知らぬ間に家族が飲み干していたとしよう。冷蔵庫に入れる前に自分の名前を書いておけばよかったし、周りにも「飲むな」と釘を刺して置けばいいだけの話だ。しかし、いくら名前を書いておいても牛乳パックの柄に紛れて見えなかったり、油性ペンだと思って使ったら水性ペンだったと、先回りしても問題は発生する。
 そうやって、試行錯誤をしながら在りつけたミルクティーは、受験勉強のお供とはいえ、さぞ美味しかったことだろう。

 でも生きていれば牛乳パックのミルクティーなんて何本も飲めるし、誰かに飲まれてもまた買い直せばいい。間違えても失敗しても、別の方法でやり直せばいい。

 ――だから、目の前にいる彼が死んだ後に道を外れようとした時、引き戻さなければならないと思った。
 どれだけ試行錯誤をしたって、死んでしまったら次の対策なんて考えられないのだから。