「……俺達はたまたま校舎裏に入っただけだ。知らなかったんだからしょうがないだろう? それよりも、早く花火を盗んだ犯人を探さないと、ボヤ騒ぎ程度じゃ済まないんじゃないか?」

 高御堂はそう言って鼻で笑うと、他の南雲の不良たちもニヤニヤと笑みを浮かべる。花火が盗まれた事はまだ公になっていない。それを知っているのは本部の人間だけ。

「やっぱり……花火まで盗んで、なにがしたいの!?」
「言っただろ? 北峰を潰すチャンスだって。祭りの役員に岸谷がいるなら、ボヤ騒ぎが起こしてお前のせいにして……」
「その必要はねぇよ」

 鼻高々にして笑う高御堂を前にして、岸谷くんはいたって冷静だった。

「それならもう回収したぞ。体育館裏でてめぇらの仲間が盗んだ花火を植え込みに括りつけていたのを取り押さえた。おかげで景品として出せるのが半分に減っちまったけどな。町内会のおっちゃん達にその場は任せてるけど、じきに警察も来る。高御堂、てめぇの七光りも通用しねぇぞ」
「な、なにを……」
「井浦、ちゃんと録れてるか?」
「……うん。多分大丈夫」

 船瀬くんが拘束される少し前――校舎裏に私一人で乗り込もうとした時に、念のためにスマートフォンのボイスレコーダーを起動させておいたのだ。中には船瀬くんと私に向けられた暴言の数々がしっかりと録音されている。

「なんで北峰の卒業生が高御堂コーポレーションに入社しているか知っているか? 何年か前に、北峰の卒業生が社長さん――てめぇの親父さんを助けてるんだよ。それがきっかけで毎年雇ってくれてるってワケ。さっき電話して事情を話したら言ってたぜ。『いくら息子でも犯した罪は償わせる』だとさ」
「っ……ふ、ふざけるな! 俺は高御堂の息子だぞ! 大企業の社長の息子が不祥事を起こしたと世間に知られたら会社は終わりだ! だから……」
「隠蔽したところでいつかはバレるんだから一緒だろ。……まぁ、それはそれで困るな」

 岸谷くんがゆっくりと近付くにつれ、高御堂は震え始めた。

「南雲との喧嘩はともかく、黒幕のてめぇがいないと、この間の借りが返せねぇじゃん」