鳴り続けるブザーを高御堂に投げつけると、船瀬くんに引っ張られるがままに走る。
 グラウンドの方から拍手が聞こえてくる。ステージで行っていたライブが終わったのかもしれない。このまま会場に紛れたら、彼らも大ぴらには動けないはずだ。
 しかし、ブザーの音が鳴りやむと、後ろから先程の不良たちが追いかけてきた。振り向けば、高御堂が支えられながら指示を出している。

「ヤバイヤバイ! 井浦先輩、追いつかれちゃいます! どうしましょう!」
「どうするって……走るの!」

 ここで止まったところで対抗出来る術はない。船瀬くんも石頭とはいえ、頭突きをしてすぐに走っているのだから、これ以上無理はさせたくない。防犯ブザーは投げてしまったし、あとはスマートフォンくらいしかぶつけるものがない。

「せめて岸谷くん達と合流出来れば――!」

 ふと振り向けば、すぐそこまで南雲の不良の手が迫っていた。もう少しでグラウンドなのに!
 すると、私と船瀬くんの横を誰かがすり抜けていき、迫っていた不良の腕を掴んで投げ飛ばした。それに続いていた他の不良たちが慌てて飛ばされた彼を受け止めようとすると、勢いの余りぶつかってドミノのように倒れていく。

「――ブザーが鳴ってる方へ行けとは言われたが……こんなに釣られてくるとはなあ!」

 私達を背中で隠すようにして現れたのは、以前荒れに荒れていた安藤くんだった。がっしりとした体格と気迫は南雲の不良たちに劣っていない。驚いている私達に、安藤くんが振り向かずに言う。

「勘違いすんなよ。岸谷の指示だから来てやってんだ。……別に、この間の借りとかじゃねぇからな」

 後ろから続々と“巡回”の腕章を付けた北峰の生徒が集まってくる。颯爽と南雲の不良たちを囲うと、後ろから出てきた岸谷くんが高御堂に向かって言う。

「北峰の敷地内に勝手に入り込みやがって、タダで済むと思ってんのか」