「幸い怪我はなかったが、花火は危険物だ。しかも校舎裏に不審者……嫌な予感しかしねぇ」
「それが花火を奪った人たちが同一犯だったら――」
「……ボヤ騒ぎだけじゃ済まねぇだろうな」

 すでに岸谷くんは本部と掛け合って、町内会だけで結成した巡回隊を校舎に向かわせているらしい。警察にも連絡済みとのことだ。

「生徒にできることはねぇって言って、俺らはこの場に待機を言われた。学校内ならともかく、町を巻き込んでの反乱は避けたいから従っているが……」
「……ねぇ、船瀬くんは?」
「え?」

 本部の事情を聞きながら見渡すが、船瀬くんの姿が見当たらない。岸谷くんもそれに気づいて、近くにいた町内会の岩井さんに聞く。

「すみません、船瀬はどこに……」
「落とし物を一緒に探してほしいっていう人が来て、ついさっき出て行ったぞ」
「はぁ!?」
「アンタに一声かけようとしてたけど躊躇っていてな、俺が代わりに伝えておくから行ってこいって送り出したんだ。せっかくお前みたいな奴を慕ってくれる後輩なんだから放ったらかすなよな、大体最近の若い奴は――」
「誰と、誰と一緒でしたか!?」

 延々と続きそうな流れを断ち切るように、岸谷くんが岩井さんの胸倉を掴んで問い詰める。
 花火を盗んだ犯人や校舎裏に向かった不審者が南雲の生徒ではなかったとしても、船瀬くんはずっと前から彼らに目をつけられている。
 しかし、岩井さんは驚きながらも「大丈夫だって」と鼻で笑い飛ばした。

「あのボウズと一緒に出て行ったのは高御堂の息子だぞ? 育ちの良い坊ちゃんが誘拐犯みたいなことするわけがないだろう」
「高御堂……? 高御堂って、あの会社の?」

 船瀬くんが高御堂の息子と知り合い? そんなことは聞いたことがない。
 そこでふと、この間の喧嘩に巻き込まれた時のことが頭を過ぎった。
 ずっと引っかかっていた、あの気味の悪い違和感を思い出す。

「……探さなきゃ」