しばらくステージを見ていると、本部で待機中の岸谷くんと船瀬くんが立ち寄ってくれた。二人の左腕には“巡回中”と書かれた腕章をしていた。

「あれ、キッシー。仕事中じゃないの?」
「休憩中。船瀬がかき氷食べたいっていうから連れてきた。イチゴくれ」
「僕はブルーハワイをください!」
「はいはい。ちょっと待っててね」

 注文を受けて佐野さんが手際よく氷を削っているのを、船瀬くんが興味津々に眺めている。それを横目に、岸谷くんが私に小声で話しかけてきた。

「井浦、こっちに袴田は来てないか?」
「え? いないの?」
「祭りが始まる前の打ち合わせで『俺は屋上から適当に見てる』って言ってそれっきりだ」
「特に問題がないから連絡しない、とか?」
「そうかもしれねぇけど、ずっと姿を見せないって今まであまりなかったから、ちょっとな」

 巡回隊に参加するのを提案はしたものの、袴田くんが岸谷くんに直接話していたから、てっきり姿を見せているものだと思っていた。自由人とはいえ、あの袴田くんが顔を出さないのは珍しい。むしろ楽しい方に自分から入っていくタイプだし、与えられた仕事はきっちりこなすはずだ。
 そんな話をしていると、後ろから急に冷たい空気が流れてひんやりとした。

『俺がどうしたって?』
「わっ!?」

 私と岸谷くんの間に割り込むように、袴田くんがやってくると、驚いて身を後ろに引いた。

「き、急に出てこないでよ!」
『だって井浦、慣れたって言ってただろ?』
「今のは突然過ぎて無理だよ! いつからいたの?」

 『ついさっき』と反省の色も伺えない顔で言う。袴田くんイコール幽霊(仮)ということを忘れてかけていた。これには岸谷くんも驚いたはずだ。
 しかし、彼を見るとなぜかしかめっ面で両耳を押さえている。

「おまっ、急にデカい声出すなよ! あー……ビックリした、何かいたのか? 虫?」