袴田くんの姿が見えるようになって一週間が過ぎた。
彼の机にはもう百合の花の花瓶や、供え物のお菓子も置かれていない。クラスメイトも友人たちも、彼の死をようやく受け止め始めたのだ。から元気な空気もようやく取り払われ、以前と変わらない光景が戻ってくる。
その当人は相変わらず机の上で突っ伏して誰かに悪戯を仕掛けようと考えているけど、誰も気付く様子はない。
あの日から袴田くんとよく話すようになった。幽霊(仮)相手に柔軟な対応ができていることに、我ながら驚いている。それでも彼が成仏せずに学校に戻ってきたことについては、未だわかっていない。彼に聞こうとしても誤魔化されて別の話に流されてしまう。もしかしたら話したくないのかもしれない。
その代わりといって、屋上で私の身体を乗っ取った時のことをようやく説明してもらえた。
文字通り、彼は人の身体に取り憑き、自分の手足のように動かせるのだという。幽霊特有のことなのかと聞いても曖昧で、彼自身も未だよく仕組みを理解していないらしい。
屋上でのあの一瞬――岸谷くんの拳が届く前に私の身体を乗っ取った袴田くんは、元の身体能力が高かったおかげで拳を払うことができたという。だから右の手のひらだけ痺れていたのだ。骨が折れていないだけマシだったと彼に言われたときは、持っていたシャーペンをまた投げそうになった。
そして、岸谷くんに付き添っていた三人から廊下ですれ違うと睨みつけてくるようになり、学校中に「袴田の再来だ!」と噂を流し始めた。それが皮切りとなり、クラスメイトはおろか、先生からも避けられるようになっていく。本当に迷惑な話だ。
でも当然かもしれない。学校側も恐れていた最強の不良に関わる噂が本当であれば、危険人物と見られても仕方がない。
……私、何もしてないけどね?
実際に何かを引き継いだわけではないし――身体を乗っ取られただけで、喧嘩をしているのは彼自身だし――、再来と言われても困るしか言いようがない。
ただ、四六時中一緒にいるような仲の良いクラスメイトがいないことが唯一救いだった。もしクラス内にそんな友人がいたら、罪悪感を抱いて教室に居づらくなっていただろう。
……いや、もしかしたら噂を聞いた途端、きっと知らん顔して私から離れていったかもしれない。
彼の机にはもう百合の花の花瓶や、供え物のお菓子も置かれていない。クラスメイトも友人たちも、彼の死をようやく受け止め始めたのだ。から元気な空気もようやく取り払われ、以前と変わらない光景が戻ってくる。
その当人は相変わらず机の上で突っ伏して誰かに悪戯を仕掛けようと考えているけど、誰も気付く様子はない。
あの日から袴田くんとよく話すようになった。幽霊(仮)相手に柔軟な対応ができていることに、我ながら驚いている。それでも彼が成仏せずに学校に戻ってきたことについては、未だわかっていない。彼に聞こうとしても誤魔化されて別の話に流されてしまう。もしかしたら話したくないのかもしれない。
その代わりといって、屋上で私の身体を乗っ取った時のことをようやく説明してもらえた。
文字通り、彼は人の身体に取り憑き、自分の手足のように動かせるのだという。幽霊特有のことなのかと聞いても曖昧で、彼自身も未だよく仕組みを理解していないらしい。
屋上でのあの一瞬――岸谷くんの拳が届く前に私の身体を乗っ取った袴田くんは、元の身体能力が高かったおかげで拳を払うことができたという。だから右の手のひらだけ痺れていたのだ。骨が折れていないだけマシだったと彼に言われたときは、持っていたシャーペンをまた投げそうになった。
そして、岸谷くんに付き添っていた三人から廊下ですれ違うと睨みつけてくるようになり、学校中に「袴田の再来だ!」と噂を流し始めた。それが皮切りとなり、クラスメイトはおろか、先生からも避けられるようになっていく。本当に迷惑な話だ。
でも当然かもしれない。学校側も恐れていた最強の不良に関わる噂が本当であれば、危険人物と見られても仕方がない。
……私、何もしてないけどね?
実際に何かを引き継いだわけではないし――身体を乗っ取られただけで、喧嘩をしているのは彼自身だし――、再来と言われても困るしか言いようがない。
ただ、四六時中一緒にいるような仲の良いクラスメイトがいないことが唯一救いだった。もしクラス内にそんな友人がいたら、罪悪感を抱いて教室に居づらくなっていただろう。
……いや、もしかしたら噂を聞いた途端、きっと知らん顔して私から離れていったかもしれない。