***
数日後、夏祭り前日に会場準備のために登校すると、すでにグラウンドには店ごとのテントが立ち始めていた。町内会の人も入ってきて、生徒会やボランティアの生徒が立ち会って話し合いを進めている。
とはいえ、担当であるかき氷ブ―スは、テーブルと氷を保存しておくストッカーの準備程度だが、責任者の佐野さんと町内会の人との打ち合わせをしている間、私と野中くんは体育館からパイプ椅子を運ぶ作業を手伝っていた。
「井浦先輩、大丈夫ですか? やっぱり持ちますよ」
「だ、大丈夫。野中くん、先に行っていいよ」
「……わかりました、サッと置いてすぐ戻ってきますね!」
『オイオイ。一年に負けてんじゃん。あと数メートルだ、頑張れー』
「だったら手伝ってよ……!」
六つのパイプ椅子を抱えて体育館からグラウンドへ、体力を使う作業を野中くんや他の男子生徒が涼しい顔でこなしていく。
二つを抱えて若干引きずりながら歩く私の隣を、さも当然のように袴田くんが並んだ。いつもなら幽霊みたく浮いているのに、今日はスラックスのポケットに手を突っ込んで歩いている。珍しいからか、なんだか不思議な感じがした。
『それで、そのタカドーって奴が間に入ったおかげで、喧嘩にならずに済んだって?』
「タカドーじゃなくて、高御堂。しかもそれ、ブザーのメーカーだし……」
『名乗らずに帰ったんだからタカドーで充分だろ』
「一応助けてもらった側だからね、私たち。……でも、誰も怪我しなくてよかった」
私や標的にされた船瀬くんはともかく、無関係な佐野さんと美玖ちゃんにまで巻き込まれた状況で、あの人が通りがからなかったらどうなっていただろうか。今日、隙を見て岸谷くんに連絡先を聞いておかなくては。
『助けてもらった、ねぇ……』
数日後、夏祭り前日に会場準備のために登校すると、すでにグラウンドには店ごとのテントが立ち始めていた。町内会の人も入ってきて、生徒会やボランティアの生徒が立ち会って話し合いを進めている。
とはいえ、担当であるかき氷ブ―スは、テーブルと氷を保存しておくストッカーの準備程度だが、責任者の佐野さんと町内会の人との打ち合わせをしている間、私と野中くんは体育館からパイプ椅子を運ぶ作業を手伝っていた。
「井浦先輩、大丈夫ですか? やっぱり持ちますよ」
「だ、大丈夫。野中くん、先に行っていいよ」
「……わかりました、サッと置いてすぐ戻ってきますね!」
『オイオイ。一年に負けてんじゃん。あと数メートルだ、頑張れー』
「だったら手伝ってよ……!」
六つのパイプ椅子を抱えて体育館からグラウンドへ、体力を使う作業を野中くんや他の男子生徒が涼しい顔でこなしていく。
二つを抱えて若干引きずりながら歩く私の隣を、さも当然のように袴田くんが並んだ。いつもなら幽霊みたく浮いているのに、今日はスラックスのポケットに手を突っ込んで歩いている。珍しいからか、なんだか不思議な感じがした。
『それで、そのタカドーって奴が間に入ったおかげで、喧嘩にならずに済んだって?』
「タカドーじゃなくて、高御堂。しかもそれ、ブザーのメーカーだし……」
『名乗らずに帰ったんだからタカドーで充分だろ』
「一応助けてもらった側だからね、私たち。……でも、誰も怪我しなくてよかった」
私や標的にされた船瀬くんはともかく、無関係な佐野さんと美玖ちゃんにまで巻き込まれた状況で、あの人が通りがからなかったらどうなっていただろうか。今日、隙を見て岸谷くんに連絡先を聞いておかなくては。
『助けてもらった、ねぇ……』