夏休みに入って数日後、佐野さんから「暇なら集合!」と連絡が入った。
 友達とプール、恋人とデート、家族旅行。そんなキラキラした言葉が、壁にかけられたカレンダーに書き込まれることが今までなかった私にとって、この呼び出しは夏祭りの買い物だろうと勝手に思い込んでいた。町内会で準備はしてくれているはずだが、急に足りないものがあったのだろうか。とはいえ、夏祭りは一週間後で、準備も前日に行われる予定だ。

 いろいろ考えながら、指定された学校近くにあるなじみのカフェに向かうと、いつも座っているソファー席に佐野さんと美玖ちゃんがいた。制服姿の美玖ちゃんは部活帰りだったのか、彼女が座る隣にベースケースが置かれている。夏休み中でも軽音楽部は練習があるらしい。

「おっそーい! 井浦ちゃんこっち!」
「え? 買い出しじゃないの?」
「ん? 何の話?」

 佐野さんが首を傾げて聞き返してくる。それを見て美玖ちゃんが失笑しながら言う。

「由香は相変わらず見切り発車だね……。ごめんね、ここ数日、由香が塾しか行ってないからお喋りがしたいーって言い出して、片っ端から連絡してたみたいでさ。家の用事とか大丈夫?」
「私は大丈夫だけど、み……美玖、ちゃんは? 部活帰り?」
「そうそう。学校出たところで由香に捕まっちゃった。ってか、名前で呼ぶのまだ慣れてないね?」
「だ、大丈夫、頑張るから!」
「ちょっと、私を放ったらかしてお喋り始めないでよー!」

 呼び出した本人の佐野さんは塾の帰りだという。受験する大学のために夏休みの期間だけ通うことだけは聞いていた。

「井浦ちゃんは? 大学受験するんだよね?」
「まぁ……うん。やりたいことがまだ決まらないから、とりあえずって感じかな」

 将来の夢とか、どんな仕事をしたいとか。十八にもなって思いつかなくて、今の自分の実力で行ける大学を目指すことにした。今のまま成績を落とさなければ問題はない……はず。
 問題を起こさなければ、の話だけど。