これ見よがしに音を立てて飲み物を購入し、ベンチのそばに立って、半分ほど中身を飲み干す。

 相手もこちらの存在に気づいているのだろう。あからさまに不審者を見るような視線を感じる時があった。

 彼女の踊っているダンスのジャンルは、凪にはよくわからなかった。
 ただ、動きは軽やかだなと思った。

 月並みな言葉で表すなら、重力を感じさせないとか、そういう「ダンスのうまい人」に当てはめられるのではないかと、凪は考えていた。

 しょせん自分は無知だが。

 気が済むまで品定めをして、凪は、飲み干した缶をゴミ箱に捨てた。

   *

 Y公園は、知る人には知られている「穴場」らしい。

 敷地が広く、一歩中に入れば奥の方に円形のだだっ広い自由スペースがある。周りは木々の植え込みなど、視界を外から遮るもので囲われており、外界の音が聞こえにくくなっている。情報に早い者がさっそく口コミでも広めたのだろう。休日には、Y公園はアマチュアダンサーや役者の卵たちの格好の練習場所とされていたようだ。