木々が生い茂る森の中に1本だけ異彩を放つ木のまわりで男の子と女の子がはしゃいでいる
「見ろこの木すごいだろ」
「すごーいきれいな色」
「これは桜って言うんだ」
「サクラ?」
「そう桜」
「わたしたちの名前にもサクラって入ってるよ」
「あ~この木はうちらの祖先が育ててきたんだ他にもあったんだけどな、この木の世話も曾祖父の代でやめたんだってさ」
「なんでなの?」
「わかんない、この木のことは亡くなったお爺ちゃんから聞いたんだ……」
「また来ようお兄ちゃん」
「そうだな、また見に来よう」
私の存在は認識されていないようだ男の子も女の子も声をかけてもきずくこともない、存在そのものが無いみたいにこの世界から無視されてるみたいな、なんか悲しいな…二人から目をそらして桜に目を向ける、この桜どこかで見たような記憶をたどるけれど、そもそも桜なんて私の住んでる街にあったかな思い出せない私のはやとちりかとも考え桜をもう一度見るがどことなく懐かしさを感じる、小学生のころに来たのかな…来たって私どうやって来たんだっけ…あれ、目の前が暗くぼやけてくる、なんで
「桃華そろそろ起きなさいもうすぐつくわよ」
お母さんの声で目を開ける、夢だったのかな?なんだか夢にしては妙にリアルだったな…なんか変な気分
外の景色を見ながら夢のことを考えていると車が止まるどうやら目的地についたらしい
「桃華先に挨拶してきて」
袋を渡されお母さんは車の荷物を下ろしに行ってしまった
しかたがないので先に玄関に行くとしよう片手でぬいぐるみを抱いて玄関に向かう表札には桜田って書かれてるこれがお母さんの旧姓なんだ小学校のころ来たことがあるらしいがそのころの記憶は全然無いっとそんなことを考えているうちにインターホンの前まで来てしまったドキドキする。
インターホンを押した、心臓の鼓動が早くなる
「はーい、今行きまーす」
扉の向こうから声がした扉が開き女性が出てくる私はその人に頭を下げて袋を渡す
「お久しぶりです、花宮桃華です」
その女性は最初キョトンとしていたが私が孫であることにきずき頬が緩む
「あら~ずいぶん大きくなったはね~」
久しぶりと言ったはいいが全然記憶がない
「ただいまお母さん」
後ろから母の声がする
「おかえり」
その声はどことなく寂しげで慈愛に満ちているように感じた
「ささ早く中に入りなさい」
「お邪魔します」
扉をくぐる内装は和風でいつも私が生活している家とは少し違った匂いがする
家に入ってまず私とお母さんは仏壇に手を合わせにいった
仏壇で手を合わせた母の顔は寂しげで悲しげで今にも泣きそうだった
母の兄は早くに亡くなった高校二年生だったらしい今の私と同じ年齢だ、だから母は私を連れてきたかったのだろうか、私が泊まる部屋について母とお婆ちゃんが話し合っていたが私は伯父の部屋に泊まることになったようだ伯父が亡くなってから伯父の物はしまうか処分してしまって空いているのだそうだ、布団を敷いてもらいその日1日中スマホをいじっていた家でも婆ちゃん家でもやることは変わらないのだ、お婆ちゃん家の匂いは気分を落ち着かせてくれる布団に潜り目を閉じぬいぐるみを強く抱く私の意識は布団に溶け込むように消えていった