……でも、いつの間に来たのだろう。
足元には水たまりができるほど水が溜まっているし、音をたてずにここに来るなんて不可能だと思うんだけど。
それとも、周りの音が耳に入らないくらい俺がスマホに集中していたという事?
……いやいや。
アプリのゲームをやっていたのなら話はわかるが、天気予報を確認しようとしてたくらいだし、集中していたわけじゃないのだが。

『おい、知ってるか?雨の日の夕方にバス停に現れる幽霊の話』

首を傾げながら不思議に思っていたら、さっき部室で聞いた声が脳内に響いた。
何でこんな時に思い出してしまうのだろう。
シチュエーション的にこの状況はかなりマッチしてるじゃないか。
俺はスマホを握りしめながら、ゴクリと唾を飲み込む。
別に幽霊の存在を信じているわけじゃないし、そういう類の話は別に嫌いじゃない。
けどさすがに一人でいるこの状況は、まずいのではないか。
出会ったら、話しかけない方が良かったのか?
見てないフリをした方が良かったのか?
……いや、でも、まだ彼女がその幽霊だと決まったわけではない。
でも……音も無く現れる事ができたのは、もしかして彼女が幽霊だから?
考えたくなくても嫌でもそう結びつけてしまう自分がいる。