昨日の続きを描こうとしていたのに、降って来た雨のせいで一気にテンションがダウンして、私は深いため息をついてスケッチブックを閉じた。

「すず、今日は終わり?」
「……うん。終わりにしようかな」

同じ部員の美波にもう一度ため息をして答える。
雨の日が描きたいんじゃない。
夕日に照らされてオレンジ色にキラキラと輝く景色を描きたいのに。
そういえば、ここ最近はずっと夕日を見ていないかもしれない。

「美波、私、先に帰るね」
「あまり顔色良くないけど一人で大丈夫?一緒に帰ろうか?」
「ううん、平気。それに、美波はまだ絵を描くんでしょ?」
「もう少しだけ描きたいかな……」
「描きたい時に描いた方がいいよ」
「……そうだよね」
「じゃあ、頑張ってね。また明日」
「うん、ありがとう。気を付けてね。また明日」

スケッチブックを棚に戻し、カバンを肩にかけて美波に手を振ると、私は美術室を出た。

あの美術室から見える風景が大好き。
学校が高台にあるから、美術室の窓から遠くの方まで見渡せる。
だから、小さな事でくよくよしていても、あの窓から景色を見れば、自分の悩みがどれだけ小さかったのか、思い知らされるというか、悩んでいた事がバカバカしくなるというか……。