8月12日(土)今日は毎年第2土曜日に開催されている花火大会で、俺らが住んでいるアパートから歩いて5分くらいの場所で行われている。
この花火大会で付き合い始めたから俺たちの中では特別なイベントである。
だから毎年この日は定食屋を休業にさせてもらうことを事前に二人に言ったら「もちろん。店長に従います。」と返されたから甘えて休みにさせてもらっている。
「香織、準備できた?もう17 時になるけど。」
花火が打ち上がるのは19時だけど屋台も回りたいと意見が揃ったからそろそろ出た方が良い。
「準備できた!どう、この浴衣?飯島さんが貸してくれたの。」
香織は嬉しそうにその場でクルクル回って上機嫌なのが見てすぐ分かる。
「凄く似合っていると思うよ。髪型もいつもと違ってより大人っぽく見えるし。」
髪は団子でまとめていて浴衣は白い生地に真っ赤な椿が咲いていて普段と違う香織の姿にドキッとした。
「なんかそう言われると恥ずかしいよ。」
そう言って香織は顔を真っ赤に染めてそそくさと下駄を履き、外の世界に飛び出していく。俺も香織の後に続いて外に出て手を繋ぎながら歩いていると徐々に人も増えて本当に人がアリの大群のようだった。
「やっぱ人多いね。迷子になっちゃいそうだよ。」「大丈夫だよ、手握ってるしもし香織が迷子になったら探すから。」
香織の方に顔を向けるとフンって言って顔をそらされてしまった。
「そういえば佑君もせっかくの花火大会なんだから浴衣着ればよかったのに。絶対似合ってたと思うよ!」
俺は歩きにくい浴衣が苦手だから黒のスキニーに白Tシャツというなんとも無難な服で来た。
「どっちかが動きやすい格好の方が良いと思うんだけど。」
香織は少しだけしょんぼりとした表情を見せてきた。俺はそういう表情を香織にされると弱い。
「…じゃあ来年は二人で浴衣着て花火大会来ようか。」
「ホントに?今言ったこと絶対来年まで忘れないでよね!」
いつも以上に香織は楽しそうにしていて俺も嬉しくなる。それから二人で唐揚げやかき氷、タコ焼きなど沢山回ってお腹いっぱいになるまで食べた。