部屋を見ると香織が居ない事を知ってしまうから見ないようにしていたけど、久しぶりにアパートを見るとやっぱり俺たちの部屋には電気が着いていなくてひっそりとしている。
そんな部屋を見て香織が居ない事を実感したと同時に目が回ってきて咄嗟に階段の手すりに掴まる。
目眩がおさまって部屋を開け、中に入り電気をつけるとそこにはやっぱり香織が立っていた。
「佑君、お疲れ様。エキザカム開店してくれたんだね。」
「香織が言ってくれなかったら俺は閉店させる気だったよ。」
話していても幻だとしか思えなくて頬をいくら強く叩いても痛い。
俺は香織がいると甘えたくなって無理だと分かっていてもどうしても側に居てほしかった。
「ねぇ香織、ずっとここに居てくれない?香織のいない家に帰ってくるのが辛いんだよ。」
懐かしいなって言いながら部屋中を見ながら歩き回っていたのに、急に俺の目の前に座って
「あのね神様から三日間だけ時間を貰ったの、大事な人へのお別れを自分で伝えてきなさいって。もし、規定を破って三日間以上この世にいると、一生天国に行けなくなるの。佑君が将来死んじゃっても天国で会えないのなんて私悲しすぎるもん。だから、佑君はここで精一杯生きて。私がいなくても佑君なら強いから大丈夫。」
そう言って泣きそうな顔で微笑んだ。
「大丈夫ってなんだよ。大事な人が先に逝かれた方の気持ちなんかお前には分かるわけ無いだろ。最悪な誕生日にしやがって。」
俺は香織が泣いているのを無視して家から飛び出して走ったけど、すぐ疲れてしまい足を止めるとそこは二人で花火大会の時によく行っていた公園だった。
ふと隣を見ると今までは笑っていた香織がいたのに今は隣を見ても誰もいなくてブランコが二つだけ寂しく並んでいた。
元気をつけようとしてくれた香織に俺はカッとなって自分の身勝手な感情で香織のことを責めて、俺だけ逃げてきた状況を理解して自分の取った行動に呆れる。
久しぶりに二人でよくこいでいたブランコをこいでみたけど、隣でこいでくれる人はもういない。
頭も冷やせたし、香織に謝ろうと家に戻るとそこにはもう香織の姿はなくてただ暗いだけの部屋にクーラーの風が不気味に吹き続けているだけだった。
次の日、仕事が無事終わって家に戻って電気をつけても香織の姿は無かった。
ご飯を食べ終わっても風呂から出ても香織は部屋に全く現れない。
でも、確か三日間だけしかこの世に居られないって言っていたから家族の元にでも行ったのか、そう思ったら昨日香織にすぐ謝っていればと後悔の気持ちが押し寄せてきた。
香織はきっと俺の元には来てくれないだろうし寝ようとベッドに潜り込んで目を瞑ったら
「佑君が死ぬまで会えるのはこれで最後だね。」
と隣で香織の泣きそうな声が聞こえる。俺はベッドから起き上がって正直に謝った。
「昨日は本当に俺の身勝手な感情で怒ってごめんな。」
「もう良いよ。最後だし笑ってさよならしたい。」香織の目からは我慢していた涙が溢れ出しているけど、必死に笑ってくれている。
泣いている香織は美しくもどこか寂しさがあり、どうしても触れたくなった。手を伸ばしても抱きしめられないって分かっていたけど抱きしめたくてしょうがなかった。
多分、これが最後だから神様からの贈り物なのだろう。
香織には触れられた。
けど、生きていたときよりも痩せていて体は氷のように冷たかった。
「笑って、佑君。」
「香織こそ泣くなよ。」
夜は二人で抱きしめ合って笑ったり泣いたりを繰り返した。
ふと目を開けると香織がエキザカムが咲き誇っている中で笑ってこっちを見て手を振っていた。
香織は元気いっぱいの笑顔で
「おじいちゃんになったらこっちに来て長い人生の話いっぱい聞かせてね。さようなら、佑君。」
俺はその美しさに見惚れて動けなかったけど香織は白いワンピースをなびかせて後ろを向き、目印のないどこかへ俺の方を向くことなく歩き続けた。
そこで意識が現実に戻り、隣を見るといつもの床に俺一人が寝そべっていた。香織のことを忘れることはないけど前を少しだけ向けるようになった気がする。
そんな部屋を見て香織が居ない事を実感したと同時に目が回ってきて咄嗟に階段の手すりに掴まる。
目眩がおさまって部屋を開け、中に入り電気をつけるとそこにはやっぱり香織が立っていた。
「佑君、お疲れ様。エキザカム開店してくれたんだね。」
「香織が言ってくれなかったら俺は閉店させる気だったよ。」
話していても幻だとしか思えなくて頬をいくら強く叩いても痛い。
俺は香織がいると甘えたくなって無理だと分かっていてもどうしても側に居てほしかった。
「ねぇ香織、ずっとここに居てくれない?香織のいない家に帰ってくるのが辛いんだよ。」
懐かしいなって言いながら部屋中を見ながら歩き回っていたのに、急に俺の目の前に座って
「あのね神様から三日間だけ時間を貰ったの、大事な人へのお別れを自分で伝えてきなさいって。もし、規定を破って三日間以上この世にいると、一生天国に行けなくなるの。佑君が将来死んじゃっても天国で会えないのなんて私悲しすぎるもん。だから、佑君はここで精一杯生きて。私がいなくても佑君なら強いから大丈夫。」
そう言って泣きそうな顔で微笑んだ。
「大丈夫ってなんだよ。大事な人が先に逝かれた方の気持ちなんかお前には分かるわけ無いだろ。最悪な誕生日にしやがって。」
俺は香織が泣いているのを無視して家から飛び出して走ったけど、すぐ疲れてしまい足を止めるとそこは二人で花火大会の時によく行っていた公園だった。
ふと隣を見ると今までは笑っていた香織がいたのに今は隣を見ても誰もいなくてブランコが二つだけ寂しく並んでいた。
元気をつけようとしてくれた香織に俺はカッとなって自分の身勝手な感情で香織のことを責めて、俺だけ逃げてきた状況を理解して自分の取った行動に呆れる。
久しぶりに二人でよくこいでいたブランコをこいでみたけど、隣でこいでくれる人はもういない。
頭も冷やせたし、香織に謝ろうと家に戻るとそこにはもう香織の姿はなくてただ暗いだけの部屋にクーラーの風が不気味に吹き続けているだけだった。
次の日、仕事が無事終わって家に戻って電気をつけても香織の姿は無かった。
ご飯を食べ終わっても風呂から出ても香織は部屋に全く現れない。
でも、確か三日間だけしかこの世に居られないって言っていたから家族の元にでも行ったのか、そう思ったら昨日香織にすぐ謝っていればと後悔の気持ちが押し寄せてきた。
香織はきっと俺の元には来てくれないだろうし寝ようとベッドに潜り込んで目を瞑ったら
「佑君が死ぬまで会えるのはこれで最後だね。」
と隣で香織の泣きそうな声が聞こえる。俺はベッドから起き上がって正直に謝った。
「昨日は本当に俺の身勝手な感情で怒ってごめんな。」
「もう良いよ。最後だし笑ってさよならしたい。」香織の目からは我慢していた涙が溢れ出しているけど、必死に笑ってくれている。
泣いている香織は美しくもどこか寂しさがあり、どうしても触れたくなった。手を伸ばしても抱きしめられないって分かっていたけど抱きしめたくてしょうがなかった。
多分、これが最後だから神様からの贈り物なのだろう。
香織には触れられた。
けど、生きていたときよりも痩せていて体は氷のように冷たかった。
「笑って、佑君。」
「香織こそ泣くなよ。」
夜は二人で抱きしめ合って笑ったり泣いたりを繰り返した。
ふと目を開けると香織がエキザカムが咲き誇っている中で笑ってこっちを見て手を振っていた。
香織は元気いっぱいの笑顔で
「おじいちゃんになったらこっちに来て長い人生の話いっぱい聞かせてね。さようなら、佑君。」
俺はその美しさに見惚れて動けなかったけど香織は白いワンピースをなびかせて後ろを向き、目印のないどこかへ俺の方を向くことなく歩き続けた。
そこで意識が現実に戻り、隣を見るといつもの床に俺一人が寝そべっていた。香織のことを忘れることはないけど前を少しだけ向けるようになった気がする。