朝、スマホのアラームが鳴ったが、今日から連休だったので停止ボタンを押すとまた布団を被った。もう少し寝たい、そう思った時ピロンとメール音が鳴る。
昨日出会った彼女からだった。

「おはようございます。1日目、〇〇駅に10時集合。水族館デート、〇〇カフェでディナー」

「え?何?」
急いでメールを返そうとしたが、次のメールがピロンと来る。
「必ず来て下さい。待ってます」

訳が分からないまま、とりあえず支度をした。昨日のお代の代わりにデートをして欲しい、という事だろうか。昨日のは僕が悪い。どうせ予定もないんだし、1日ぐらいいいか。僕は待ち合わせの場所へ向かった。

彼女はベージュのパーカーに薄ピンク色のプリーツスカートを履いていた。可愛くてドキドキしてしまった。

「あの、さっきのメール」
「来てくれてありがとうございます。さっきメールした通りにデートして欲しいんです」
「え?」
「とりあえず、行きましょう!」

彼女のペースに流されるまま、水族館を回った。その後、少しショッピングなどをしてメールに書いてあったカフェでディナー。彼女に振り回されていたが、正直、とても楽しかった。たくさん笑う、たくさん喋る、明るい子だった。今日で終わりだと思うと寂しかったが、彼女が帰り際に言った言葉。

「また、明日」
明日の朝、その意味が分かる。


「おはようございます。2日目、〇〇駅集合。ドライブデート。〇〇海岸を走る。海を眺めながら手を繋ぐ」

「へ?海?手を繋ぐ?」

またデートのシナリオ?急いで顔を洗い、支度をし車を掃除した。そして、〇〇駅目指して車を走らせた。
彼女を助手席に乗せて、〇〇海岸沿いを走り抜ける。窓を開けると潮風が鼻腔をくすぐった。彼女の髪が海風で揺れて、またドキドキしてしまう。気が合ったからか僕たちはすぐ仲良くなった気がした。
白い砂浜をギュッと踏むと、波が打ち寄せる音が聞こえた。彼女は色々な表情をする。今日は遠い目をしていて、深い青に吸い込まれそうだった。僕は思わず、彼女の手を握りしめていた。


〝あなたの一週間を私に下さい〟


その意味がようやく分かった。毎日シナリオ通りにデートをするという意味だ。一週間だけの限定だが、そんなドラマみたいな事も楽しいだろう。だから、彼女に付き合ってあげる事にした。その言葉の本当の意味が分からないまま、彼女とデートを重ね、6日目の朝を迎えようとしていた。

僕は彼女の事を好きになっていた。