「じゃあ、千太郎は?
ほら?ドラマとかにあるように、ちらほら二つの人格が入れ替わったりとかするの?」



ドラマだけじゃなく、そんな小説や漫画も見た事がある。


何かのキーワードを聞いたり、
時間だったり、ショックを受けたりとかで、
その人格が入れ替わる。


もしくは、その入れ替わりが自由自在だったり。


スイッチを押すみたいに、パチパチ切り替わる感じで。



「そんな、都合良くねぇよ」


「えっ?」


「俺が消えない限り、千太郎は再び外に出て来れない」


「そう…なの…」


「今も、俺の中でジッとお前を見てんだろうな?
万里ちゃん、万里ちゃん、って」



そう言って、クククッと笑う感じが、
凄く不愉快。


「あんたねぇ!」


「いいじゃねぇか。
千太郎より俺みたいなのが好きなんだろ、万里」


そう自然に、私の名前を呼び捨てにする、その零という男。


「まぁ、千太郎の親にはバレないように上手くやるか。
いい子の千太郎君、を」



そうやって、千太郎をバカにされる事が、本当に不快で。




「あんたなんか消してやる!
絶対、千太郎をまた取り戻すから!」


「頑張れよ」


零は、そう挑発的に笑う。