「―――お前、さっさと退けよ」


千太郎はその閉じていた目を開けた。


その二つの目が、私を見ている。



「え?
千太郎…」



「お前、いつまで人の上に乗ってんだよ。
ちびのくせに、すげぇ重い」


そう言われ…。


私は千太郎の上に、馬乗りになっている状態で。



「ご、めんなさい…」



私は頭の中が色々とパニックになりながらも、
千太郎の上から体を退ける。



「お前、アイツの事ふるの容赦ないな?」


「えっと…」


千太郎の言ってる、アイツって?


それに、その口調は私が知っている千太郎じゃなくて。


口調だけじゃなくて、その表情だって。


いつもパッチリと開いて私を見ていたその目は、
細められて、私を睨み付けている。



千太郎なんだけど、千太郎ではない、その感じ。




「―――あなた、誰?」



私も一体何を訊いているのだろうか?


この人が千太郎なのだと、私もよく知っているはずなのに。



「―――零(れい)。

俺の名前は、零」



「零…」


誰よ、それは一体…。




「俺は、千太郎の中に居た、別の人格だ」




それって…。

もしかして……。


二重人格…ってやつ?