「万里ちゃん!
危ないっ!」



その千太郎の声と同時に、
私はギュッと目を瞑った。


落ちる…。



ドン、っと鈍い音がして、
それなりに痛いと感じていて。



けど、私の手や足に触れているのは、固いコンクリートではなくて。



目を開け体を起すと、何故か千太郎が私の下敷きになっていて。


多分、千太郎は私を庇ってくれてそうなったのだと思う。



とりあえず、ドラマとかみたいに一緒に階段から落ちて、中身が入れ替わるとかなくて良かったと思った。


私は、私みたいだ。



千太郎に目を向けると。


千太郎は、ただ静かに目を閉じていて。


えっ、嘘…。


千太郎?


息はしてるよね?



私は、千太郎の口元に手を当てた。



千太郎の息が、私のその手に当たり、ホッと胸を撫で下ろした。


した、けど。



非常階段の踊場に私達は落ちたのだけど、
振り返りその落ちた階段を見上げるとけっこう高さがあった。


千太郎の頭を見るが、血は出てないみたいだけど。