「だって…。
じゃないと、万里ちゃんは俺を好きにならないんでしょ?」



今にも泣きそうなその千太郎の顔を見ていて、ヤバイと思う。


この人が、男なのにけっこう子供みたいにわんわんと泣く事を、私はよく知っている。


子供の時から何度もジブリ作品の火垂るの墓を観ては、毎回泣く。



何故か、トトロでも泣く。


「とりあえず!
千太郎の事は、幼馴染みとしては凄く大切だけど、
本当に、そんな風には思えないから!
以上!」



私は立ち上がり、千太郎から逃げようと思うけど。


そもそも、今居るこの場所は私の部屋。


ついさっき、
学校が終わって帰宅した私を待ち伏せしてたかのように、
千太郎がやって来た。


チャイムを押し、私に話があると。



「万里ちゃん!
俺にワンチャンちょうだい!」



「無理!」


私はそのまま自分の部屋から出ると、
すぐそこの玄関で靴を履いて、家からも出た。



あ、スマホや鞄置いて来たな、と思ったけど、
私を追いかけて、私の家から出て来た千太郎を見て、とりあえず逃げる。



「万里ちゃん!
待って!」


そう追いかけて来る千太郎に、逃げる私。


エレベーターの前を通り過ぎ、
私は非常階段へと行く。


千太郎は昔から足が早くて、もう追い付かれそうで。


そのままの勢いで階段を下りようとした時、
足が絡まった。