「千太郎、私が辞めてからメキメキと実力つけてたみたいですよね」


千太郎は、私が一度練習の時に千太郎に負けた事がショックで心の傷となり、
空手を辞めたと、勝手に思っていたみたいで。


私にとって、空手はタブーだと勝手にされていた。


だから、それを知っている零は、七瀬さんがあの日私の前でそんな空手の話をしないように、話題を打ち切ろうとしていた。


あの日、その誤解が解けた後は、
千太郎は部屋に空手の大会で優勝した時の表彰状を貼るようになった。


優勝のトロフィーを飾ったりも。


そんな千太郎は、高校卒業迄空手を続けていて、5段迄行った。



「千太郎、あんな大人しそうな顔して、
超悪い兄貴の影響で、たまにタバコ吸ったりしてたみたいだし。
後、これも兄貴の影響なのか、16歳になったらすぐにバイクの免許取ってたしな。
本当、千太郎って俺が知ってる中で一番最強」


そのタバコは今まで知らなかったけど、
そのバイクの免許を取っていた事は、
かなり後から知った。


それを何故私に隠していたのか千太郎に訊いたら、
驚かせたかったから、と言われた。


私がそのバイクの免許の事を知ったのは、
あの零が消えた日の翌日。


その日は私の誕生日で、お祝いだと、千太郎は私をバイクの後ろに乗せてくれた。


「ほんと、私もすっかりと騙されていたな。
一言千太郎に文句言って来ないと」


私はゆっくりと、千太郎の方へと歩いて行く。


お嫁さんの羽七ちゃんは、今は女友達に囲まれていて、
タイミングよく、千太郎は一人ポツン、と、していた。