「私ね、悪い男が好きなの!
不良とか。
芸能人ならあの人だし。
音楽もロックしか聴かないし!
ほら?中学の時、私一原(いちはら)先輩が好きだったの知ってるでしょ?
あの人超悪かったでしょ?
授業中タバコ吸ったり、触るものみんな傷付ける感じで」


今も近所でたまにその一原先輩を見掛けるけど、
怖いな、とその纏う空気で思う。



「万里ちゃんがあの人の事好きだったの覚えてる…。
俺もあの人には廊下で肩ぶつかっただけで、凄い怒られたりしたし。
殴られたりはしないけど…。
中学の時のあの人、常にキレてたよね」


「そうそう。
私、ああいう人が本当に好きなの。
周りを寄せ付けないようなオーラ」


最近、ハマッている少女漫画も不良のカッコいい男の子が一杯出て来る。


その中の、リーダー格の男の子に、
2次元だと分かりながらも恋している、現在の私。


そんなのだから、私はいつまで経っても彼氏の一人もできないんだって、
よく友達に言われたり。


ちなみにその漫画、その登場人物の不良少年達は、コードネームとして仲間うちで数字で呼び合っていて、
私の推しのその彼は、リーダーに相応しい番号で呼ばれている。



「だから、千太郎の事は…」


「俺、変わるから!
悪くなる努力するから!
喧嘩もする!」


懇願するように私の手を、
ぎゅっと千太郎が掴む。



「いや、それはしなくていいよ…。
千太郎ママ泣くよ…」



千太郎には、一平(いっぺい)という2歳上の兄が居て、
その兄は昔からそこそこ悪くて。


千太郎ママがうちの母親によく愚痴っているのを知っている。


その一平兄ちゃんとは違い、
千太郎は子供の時から素直なとてもいい子で、
全然苦労した事ないと、それも千太郎ママが言っていたのを聞いた事がある。