私が零の横に座ると、狭いゴンドラだからか、その距離を近く感じる。




その高さが、てっぺんに来る頃。




「そろそろ、俺消えるわ」


そう、ポツリと零が呟いた。



「消えるって」


私が思っている意味なのだろうか？



零が消えて、また千太郎が戻って来る。



「だって、お前、すげぇ辛そうな顔してるから。
俺より、千太郎のがいいんだろ？

さっきもそれが言いたかったんだろ？
千太郎を返して欲しいって？」



そう訊かれ、躊躇わずに頷いていた。


‘ーー零、あのさ…ーー’


さっき、千太郎の空手仲間が来なかったら、
私は千太郎を返して欲しいと、零にお願いするつもりだった。



「ごめんなさい…。
零の事が嫌いっていうわけじゃないの。
私の近くにずっと千太郎が居たから…。
千太郎が居ないのが、私は無理で…。
千太郎に会いたいの…」



自分でも、なんで泣いてるんだろう、って思うけど、
言葉と一緒に涙が溢れて来る。



「お願い…。
千太郎を、私に返して…」


涙で目の前が滲んで来て、もう零の顔がぼやけている。


ぼやける零の顔は辛そうで。


今日、零がずっと暗かった理由も分かった。


消える、と私に伝えようと、今日こうやって誘ってくれた。



「―――じゃあ、キスしろ」



「え？」


その言葉に、ピタリ、と涙が止まった。