私達はアウトレットモールを出て、
再び海の方へと歩く。


その大きな観覧車は、半分海に突き出した感じで立っている。




夜になるとその観覧車はキラキラとイルミネーションが点灯されて、
まるで花火みたいに綺麗に見える。


冬ならこの時間でも真っ暗でそれが綺麗に見えたけど、

夏の今は、まだ完全に日が落ちていない。



観覧車なんていつ振りだろうな、って、
そのゴンドラに乗り込んだ。


私と零はその狭いゴンドラの中、向かい合う。



零とは一度会話が途切れると、
お互いどちらも話さない状態が長く続く。


今も、そんな状態で、ゴンドラの中は、静まり返っている。



千太郎とは、いつもずっと話していたな。


どんだけ話すんだ、ってくらい。


その殆どは私が話していて、千太郎はそんな私の話を、
笑って聞いていて。



「お前、千太郎とはあんだけ話してたくせに、
俺には全然話しかけてこねぇじゃねぇか」



まるで、考えていた事を読まれたかのような、
その零の言葉。



「零とは、何を話していいか分かんないもん」


そう言って、零を見てしまう。


この人は千太郎と記憶を共有しているから、
千太郎と同じように話しかけても、そこそこ会話は成立するはずなんだけども。


子供の時の話、家族の話、学校の話、
漫画の話…。



千太郎にしてたみたいに、なんでこの人には出来ないのだろうか。




「なぁ、お前ちょっと俺の横来てくれねぇか?」



「え、なんで…」



と、思ったけど。



零の顔色が少し悪くて、外が見えないように少し俯いている。




「もしかして…。

怖い?」


中身は千太郎じゃなくても、
零も高い所が怖いのだろうか?


やはり、同じ体を共有しているから?


その脳で、同じように恐怖を感じるのだろうか?



「いいから、こっち来いよ!」


そう怒鳴られたのが、今のこの状況では、ちょっと面白かった。



「はいはい」


そう私が立ち上がると、



「お前!揺らすな!
ゆっくりとしてくれ!」


そう必死で、そんな零に思わず笑ってしまう。