「クラスの男子から、八代(やしろ)は空手なんてしてるからそんな狂暴なんだろ、って言われて。
それがショックで…」



確かそんな理由だった。


その私を名字で八代って呼んでたあの男の子は、小学3年生と4年生の時同じクラスメイトだった。


特にその男の子の事を好きだとかではなかったのだけど、
わりとクラスで目立っていた子だったからか、ちょっと意識したのかな?

その男の子にそう言われて、私は空手を辞めた。


その学年の時は、千太郎とは違うクラスで、
私にそんな出来事が有った事を知らないだろう。


小学校時代は、5年生と6年生の時しか千太郎とは同じクラスにはならなかった。


違うクラスでも、ずっと仲良しだったのだけど。



「え、そんな理由なのか?」


零は驚いていて、
そのリアクションを見ていると、
そんな理由で空手を辞めた私はバカだったのかと思った。


今も続けてたら、そこそこいい線行ったのかな?


そう思うと、残念だけど。


「千太郎は、もっと違う理由でお前が空手辞めたと思ってたみたいだけどな」


その零の言葉に、え、と声が出た。

違う理由?


「お前が辞める少し前、
練習でお前と千太郎が組手した事有っただろ?」


「まぁ、そんな事はしょっちゅうあったから、あったんだろうね」



そこまで大きな道場では無かったので、
級の違う私と千太郎がそうやって組手の相手をする事はよく有った。


「ほら、そん時にお前に千太郎が勝ってしまった事があっただろ?」


私が千太郎に負けた…?


そんな事、あったっけ…。

あっ!