私達は、別に打ち合わせたわけではないけど、
クレープを食べながら海の方へと歩いて行く。
柵があり、海辺へは出られないのだけど、
波の音が聞こえるくらいには近付ける。
その頃には、私達はクレープを食べ終わっていて、
近くに有ったゴミ箱にそれを順番に捨てる。
今日、零に会ってから思っていたけど、
今日はあまり話さないな。
なんか暗いって言うか。
私の思い過ごしかもしれないけど。
「後で、モールの方行かない?
服とか見たい」
「ああ。
別に今からでもいいけど」
そうやって向けられたその優しい顔は、
零にも千太郎にも見えて、
この人が一体どちらなのか分からなくなる。
「零、あのさ…」
そう私が言い掛けた時。
「千太郎じゃんか?」
二人組の男性がそう言って私達の方へと近付いて来た。
この二人、けっこう身長差があり、
さっき千太郎の名前を口にしていたのは、
背の高い方の男性。
千太郎の知り合いみたいだけど、
私達と同じ歳くらいに見える。
だから、千太郎の高校のクラスメイトとか?
私達と同じように、私服だけど。