特に断る理由もなくて、
私は零と一緒に勉強をする事にした。
それは、千太郎の部屋で。
多分、千回以上と来ているこの千太郎の部屋なのに。
なんだか、落ち着かない。
「お前、そこ間違ってねぇ?」
小さな丸いテーブルの上、
二人ノートと参考書を開いて、
数学の勉強をしていた。
零は本当に千太郎くらい勉強が出来るのか、
自分の勉強をしながらも、私の間違いをそう指摘してくる。
「えっ…。
ああ、ここ足すの忘れてた」
私はその間違いを消しゴムで消し、
改めてその数式を書き込む。
「もっと落ち着け。
万理は昔からそういうちょっとしたミスが多いから」
「そうかな…」
やはり、この人も千太郎と同じように、
ずっと私の事を見ているんだな。
じゃあ、昔一緒にお風呂に入っていた事とかも覚えているのだろうか?
「お前、なんで赤くなってんだ?」
そう指摘されて、なんでもない、と首を振る。
「お前、けっこう俺の事好きになってんだろ?」
そのセリフと共に、顎を掬うように右手で持たれて。
その上、少し細めた艶っぽい目で見られて。
ヤバい、と思う。
ドキドキとし過ぎて、本気でヤバい。