私達が腰を下ろした岩場は、
大きく縦向きに凹型になっていて、
日陰になっている。


まだ7月になったばかりで、もう夕方だからか、
日が当たらなければ、ちょっと肌寒い。


「けど、よくバイクなんか運転出来たよね?」


私は不良漫画は好きだけど、
現実のバイクとかには全く詳しくはなくて。


そんな私でも、零が馴れたようにバイクを走らせていたのは分かった。



「あ?
んなもん、見よう見まねで出来んだろ」



見よう見まね。


千太郎の兄である、一平兄ちゃんの真似かな?


そういえば、千太郎がよく一平兄ちゃんにバイクに乗せて貰ってるって言ってたな。


でも、バイクの後ろからじゃあ、その運転は見えないけど。


「ねぇ、千太郎の中に居たあなたから、
外の世界はどんな風に見えてたの?」



そう訊く私に向けるその零の目は、初めて見せてくれた優しい目で。


千太郎に戻ったんじゃないかと、思わされるものだった。


「ただ、ボーと意識があって、
見てるだけ。
テレビみたいに、画面に映像が映ってるんじゃなくて、
目に直接映ってるような感じか」



それって、普通にこの目で見てる感じと同じなのでは?と思うけど。


自分の意思とは関係なく、ただ見えているって感じなのかな。