「よぉ」



学校が終わり、私が家の扉の鍵を開けようとしていると、
隣の家の扉が開いて、千太郎が顔を見せた。



ただ、今は千太郎じゃなくて、零。



やはり、この人はまだ零なのだと、
パッと見た瞬間から分かる。



けど、本当に見れば見る程その顔は千太郎で…。



「お前、じろじろ見んなよ」


そう睨まれて。


それが怖くて、ちょっと怯んでしまう。


「今日、体調悪くて学校休んでるって千太郎ママから聞いた。
体調悪いんじゃないの?」



目の前に立っている零は、見る限りに元気そう。


「んなの、サボりに決まってんだろ。
んな事より、お前を待ってたんだよ」


「私を?」



ああ、じゃあタイミングよく外に出て来たわけじゃないのか。


私は自宅に帰るのに、千太郎の部屋の前の共有廊下を通るから、
その窓に映る人影で出て来たのか。



ちなみに、私の家は角部屋だから、
私達家族以外、千太郎の家の前を通らない。


「ずっと寝てても暇だしよ。
どっか行かねぇ?」



なら、テスト勉強しとけよ。

明日から期末テストだろ、と思ってしまうけど。


目の前の零は千太郎と違い怖いから、そんな事は言えなくて。