昨日はそんな感じで、零とは喧嘩のようになり、あの後すぐに彼を部屋から追い出した。


「万里ちゃん、おはよう」



朝、自宅から出てすぐに、
千太郎のママに声を掛けられた。


千太郎ママは、近所のスーパーでパートをしていて、
家を出る時間が私と同じくらいなのか、
よく朝こうやって顔を合わせる。


千太郎と私は違う高校で、
自転車通学の私とは違い、
電車通学の彼は、私よりも30分家を早く出ている。



「梅雨が明けたのはいいけど、
今日も朝から暑いわよね」


「そうですよね」


既に、汗ばんでいるのを感じる。



「万里ちゃん所は、テストいつから?」


「うちは、来週から…。
千太郎の所は、明日からでしたよね」


今は7月に入ったばかりで、
もうすぐ期末テストかぁ、と思い出してしまった。



「そう。
そうなんだけど、千太郎夕べから体調が悪いみたいで、今日休ませて家で寝てるんだけど。
明日には、治ればいいんだけどね」


えっ?と、私はマンションの共用廊下に面した千太郎の部屋を見る。



電気は消えてるみたいだけど、
寝てるのだろうか…。



「なんかね、千太郎夕べから様子がちょっと変で。
万里ちゃん、何か知ってる?」


「―――いえ…」


知ってるというか、今は千太郎は千太郎ではなくて、
零とかいう人物で…。


今、それを千太郎ママに上手く説明出来る自信がないので、
とりあえずこの場は隠しておこう。

別に、それは零に黙っていろと言われたわけじゃなくて。