彼は小説家だと言った。

水族館に来ると小説のネタが色々と降ってくるらしく、何回も来ている内にくらげの虜になったんだと言う。

確かにこの美しい不思議な生き物は、人を一瞬で惹きつける。こんな風にふわふわと泳げたらきっと気持ちがいいだろう。

彼とくだらない話をしながら、何回この水槽を眺めただろう?
色々と話す内に、私の中で彼の存在が大きくなっていくのに気付く。

くらげ達に会うより、彼に会うのが楽しみになっていたんだと思う。


「水族館をテーマとした恋愛小説を書きたい。だから……僕と恋愛をして欲しい。」

と彼が言い出した。


小説を書く為に言ったに違いないが、私は嬉しくて胸が高鳴り、舞い上がりそうになった。
くらげ達が今日は一段と美しく見える。


「いいですよ」


私たちの恋が始まった。