ーー7月6日。



彼女の誕生日の前日。僕は、いつしか行った公園で彼女を待っていた。

珍しく彼女の方からの誘いだった。今までは、いつもの餃子屋で曜日を決めて会っていただけだったけれど、今回は違う。

僕も、誕生日当日に彼女に会えるわけがないことは分かっていたから、会うなら今日だと思っていた。


夕陽が沈みそうな時間の静かな公園。そのブランコに腰を掛け、ポケットからひとつのストラップを取り出した。

へんてこな顔をした動物のマスコットストラップ。彼女は、ゲームセンターの景品であるこれをずっと欲しがっていた。

彼女の彼に怪しまれないものを、と考えながらプレゼントを選んでいた僕は、間違いなく彼女にとっての一番ではなかったし、それを今も酷く痛感している。



「お待たせ」


右手を上げてこちらに向かってくる彼女。それを見て、僕はストラップを再びポケットにしまった。



「急に呼び出しちゃってごめんね」

「ううん、大丈夫。何かあった?」


僕の問いに、彼女の表情が一瞬曇った。


「あ、子供ちゃんが来たね」


まるで、会話を逸らすかのように、タイミングよく公園へとやってきた男の子を見て、彼女が笑った。


「黄色いボール持ってるね。ボール遊びでもするのかな」