「でも、告白はしないでほしいの。ずっと、君とはこのままでいたいから」


大きな驚きのあと、少しずつ嬉しいという気持ちが沸き出てきた。でもそれも束の間、彼女は瞼を下ろしてそう言った。


「私ね、彼氏がいるの」


震えた声で放たれた彼女の言葉。その言葉で、ようやく僕の理解は追い付いた。


「向こうは年下で、それなりに付き合いも長いからご両親にも会ってる。年上の私がしっかりしなきゃ、って思って、付き合いはじめた当初から“しっかりしたお姉さん”を演じて、そうしたら、ご両親も“しっかりした子”だって言ってくれて。彼もそういうしっかりした私が好きなんだって言ってくれる。だけど」


「だけど…?」


明らかに、後半彼女の声が震えていた。


「ううん。ごめん。忘れて」


彼女は、口角を上げてそう言うと、ブランコから立ち上がった。

頑張って笑おうとしている彼女の言いたいことが少しだけ分かってしまった。

「帰ろう」

そう言ってまた無理に笑う彼女が震える唇を必死に噛み締めているのが、街灯に照らされて分かってしまう。だけど、きっと、僕にできることは何もなかった。