彼女は人通りの少ない住宅街の中にある小さな公園へと入ると、一目散にブランコへ向かった。


「ほら、早く早く」

隣の誰も座っていないブランコの上で手のひらをトントンとバウンドさせて、僕を呼ぶ彼女は本当に子供のようだった。


「うん。今行くよ」

彼女といると、まるで、子供でもできたような感覚になることがあった。

僕は一人っ子だったし、どちらかといえば子供は苦手な方だ。

今までもずっと勉強や仕事ばかりしていて、人付き合いも得意ではない。人を甘やかすことも上手くできず、頼りない僕は、いつも女性に振られる側の人間だった。

だけど、幾度となく彼女は「君になら何でも話せるなぁ」と言って嬉しそうに笑ってくれた。僕も、できることなら彼女のことを守ってあげたいし、何だって聞いてあげたいと思っている。


「ねえ、私ってどんな人だと思う?」


突然、彼女はそんなことを言い出した。

どうして突然そんなことを言い出したのか気になり彼女の横顔を見る。ふわりと分けられた前髪から覗く瞳は、何となく濡れているように見えた。