アイツと出逢ったのは、俺が高校を出てすぐの頃だった。

社会に反発しながら社会人として働き始めた頃、俺はとある休日、憂さ晴らしに海に来ていた。

親にプレゼントして貰った、カッコいい愛車のスポーツカーに乗って。

浜辺で俺は、海に向かって意味もなく叫んでいた。

そんな時、横から『クスッ』と笑い声が聞こえて振り返った。

そこにはキレイな黒髪が美しくなびく、女性が立っていた。

俺はその美しさに一目惚れしてしまった。

俺は勇気を持って話しかけた。

「あの!」と。

「あ、ごめんなさい。笑ってしまって…」というこの女性、相川汐里。

笑顔がとても素敵な大人の女性という感じだった。

「私は相川汐里よ…この近くで働いててね…ここにはよく来るの。海って不思議よね。見てるだけで、気持ちが落ち着くっていうか、楽になる気がしない?」と言われた。

「そうですね。俺もムシャクシャしてたんですけど、少し楽になった気がする…」と俺は言う。

「…お名前聞いても良いかしら?」と言われて、

俺は名前を言ってないことを、思い出した。

「月島暁斗です…今年社会人になった一年生なんです」と俺が言うと、

「…そっか…1年目かぁ。色々あるわよね。けど、これからもっといろんな事があるわよ。けど人生は楽しむのよ!たまにはここに来て、息抜きしてね」とこの優しいお姉さん、汐里は言った。

遠くを見つめる、汐里、

隣で俺も遠くを見つめた。

しばらくして、俺は帰ろうとした。

「あの!」今度は汐里に声をかけられた。

俺は振り返る。

「…これもきっと何かの縁だと思うので、よかったらお食事でも…」と随分積極的な汐里につられるように、俺は頷いた。

そして、俺らは俺のスポーツカーに乗った。

汐里に言われるまま、俺はオシャレなお店に連れてこられた。

2人で食事をしてお話をした。

汐里はスゴくカッコいい。優しくて、周りからも頼られている。

ユーモアもあって明るくて、元気にしているんだなあって思った。

俺もそんな汐里から元気を貰った。

食事を終えた後、俺らはLINEを交換した。

初対面なのに…

こんな気持ちなるのは始めてだった。

俺は汐里を家まで送り、別れた。