翌日もわたしは教室で授業を受けた。最後の授業が終わると、いそいで荷物をまとめて、廊下へ出る。
 昇降口に向かってずんずん歩いていたら、鴨ちゃん先生にばったり会った。

「あら、水原さん」

 白衣姿の先生が、わたしの顔を見つめてにっこり微笑む。
 だけどやっぱり、先生に白衣は似合っていない。

「昨日も今日も保健室に顔を出さないから、どうしてるかなって思ってたんだよ」

 わたしは先生の前で、両手をぱんっと合わせる。

「ごめん! せんせ! ちょっと忙しくて!」

 鴨ちゃん先生はぷっと噴きだして、あははっと笑った。

「なに言ってるの。保健室なんて来ないほうがいいんだから。忙しいのはいいことだよ」

 先生がわたしの肩をぽんっと叩く。

「また気が向いたら、遊びにおいで」

 ひらひらと手を振って歩きだす、鴨ちゃん先生に駆け寄る。

「せんせ! これ!」

 ポケットから取りだしたのは、ミルク味のキャンディー。

「あげる! 食べて!」
「ありがと。水原さん」

 わたしからキャンディーを受け取る先生の手は、やわらかくて、とてもあたたかかった。