「ごめーん、碧人。わたし碧人みたいなガキっぽい子、タイプじゃないんだー。わたしはもっと大人っぽいひとが好きなの。たとえば……マキ先生みたいな?」

 碧人の顔が怒ったみたいに、かあっと赤くなる。

『はぁ? 誰がおまえなんか好きだって言った? おれだっておまえみたいなへんな女、ぜんっぜんタイプじゃねーし!』

 碧人が「ぜんっぜん」ってところに、めちゃくちゃ力を込めて言う。
 そんな碧人の横から、一成が口をはさんだ。

『碧人、無理してね?』
『してねーわ!』

 碧人が一成を叩こうとして、するりとかわされる。ふたりは追いかけっこするように、バスケットゴールのまわりをぐるぐる走りはじめた。

「そういうところがガキっぽいって言ってんの」

 ため息をつくわたしのとなりで、部長の瑛介くんも、アイスを食べながらうなずいた。

『たしかにな』

 同意を得たわたしは、にかっと笑ってから、ぼうっと突っ立っている美冬にも言う。

「ねぇ、美冬もそう思わない?」

 すると美冬は、ちょっと恥ずかしそうに答えた。

『う、うん。でもわたし、碧人くんの走るとこは、いまでもカッコいいって思うよ』

 わたしはそのとき思った。
 美冬は碧人に、恋しているんだなって。

 だって、碧人の姿を目で追う美冬の頬は、ほんのり赤く色づいていて、すごく綺麗だったから。