汗が勝手に噴きだすような暑さのなか、わたしはふうふうと息を吐きながら坂道をのぼった。

 まいったなぁ、ほんとうに体力ないや。
 筋トレでもしようかな。体育の筋肉先生みたいに。

 坂道のてっぺんの公園に、子どもたちの姿はなかった。
 真夏の炎天下、遊んでいる子どもなんていないんだろう。熱中症になってしまう。

 わたしはバスケットゴールのある芝生広場に行き、木陰のベンチに腰を下ろした。
 碧人はいつ来るんだろう。アイスでも買ってくればよかったかな、なんてちょっと後悔する。

 ひとりでぼうっと景色をながめていたら、篠宮さんの言葉を思い出した。

『わたしが碧人くんに告白するのは問題ないよね?』

 篠宮さん、ほんとうに告白するつもりなのかな。
 もしかして、もう告白してたりして。

 胸の奥がざわざわしてきた。美冬じゃなくて、篠宮さんとつきあう碧人の姿を想像する。

 ふたりは同じ高校だし、同じクラスだし、同じ部活だし、共通の話題もたくさんあるだろう。
 教室のなかでも、放課後も、いつも一緒。西高校の制服を着たふたりが、並んで歩く姿を想像するのは、美冬のときより簡単だった。

 いままではわたしが、碧人の一番そばにいたのにな……

 胸がちくんっと痛んで、なんだか寂しくなったとき――

「夏瑚!」

 聞きなれた声が、わたしを呼ぶ。
 ゆっくりと顔を上げると、制服姿の碧人が、小さく手を振り駆け寄ってきた。