ベランダに出て、鉢植えに水を与える。じょうろから流れた水が、乾いた土にじわじわと染みこんでいく。

 水をやり終えると、窓辺に腰をおろし、スマホの画面を開いた。
 碧人とのトーク画面。さっきからわたしはずっと、その画面を開いたり閉じたりしている。

『走れないの』

 ベランダから空を眺め、篠宮さんの声を思い出す。

『碧人くんを、助けてあげて』

 わたしはスマホを持ったまま、小さく息を吐く。

 昨日、篠宮さんとはうやむやなまま別れてしまったけど……それからずっと考えている。
 ずっと、ずっと、碧人のことを。

 そのときスマホが音を立てた。メッセージの通知音だ。あわてて画面を見ると、昨日連絡先を交換し合った、篠宮さんからメッセージが届いていた。