『八月二十三日午前、高速道路を走行中のバスに、対向車線から飛び出したトラックが衝突、その反動でバスは道路脇の壁にぶつかり大破するという事故がありました。このバスには陸上競技会に参加する予定だった峯崎市内の中学三年生や引率の教師など四十五名が乗っており、九名が死亡、三名が重体、三十三名が重軽傷を負う惨事となり……』


 あたりまえの毎日が、あたりまえじゃなかったって気づくとき、ひとはどれだけたくさんのものを失うんだろう。
 どれだけ大切なものを失うんだろう。

 とても暑かったあの夏。
 中学三年生だったわたしは、とても大切なものをたくさん失くしてしまった。