「なにこれー!きみがつくった青?」

「っわ、なに、は?」

「すごいねー!海みたいな青だねー!」

「ビビらせんなよ、いつからいた?」

「え?たった今だよ?」



昨日と同じ制服姿で、相変わらず裸足のまま背後から急に声をかけていたナツというへんてこな女は俺の横に並んで一緒にスマホの写真を覗き込んでいる。



「ほら、晴れたでしょ?」

「なに、晴れの子なん?」

「ハハ、なにそれ?」

「知らねえのかよ、無知か」

「学校さぼったんだね、悪い子だー」

「お前に言われたくねえな」

「わたしは今から行くもんね」

「何にも持ってねえじゃん」

「あー、あっちにあるんですー」



昨日去って言ったほうを指さして、へらへら笑って、それからまた海のほうを見た。



「いいよねー、海って」

「…初めてちゃんと見た気がする」

「ええ!もったいない!毎日見たほうがいいよ!」

「見るだけなのかよ」

「きみは入りなよー、きっと冷たくて気持ちいよ?」

「お前は入んないの」

「わたしは、水が得意じゃないんだよー」




ほらほら、と背中を押されて波に近づく。
靴と靴下を脱ぎ捨てて、ぺたり、海水に触れる。


そういえば、「冷たい」を表す色はどうして青なんだろうと、浸かった足を見て、間近で見たら透明に見えるそれを見て、思っていた。