学校に向かう道の真反対に頭を向けた原チャリに母親は呆れていたが、昨日のスケッチブックと色鉛筆だけが放り込まれたスクバを背負いそれにまたがった。

たった12時間ほど前に走った道をもう一度辿っている俺はこの上ない馬鹿なんだろうけど、天気予報が見事に外れたせいで俺はまんまと学校をさぼることになる。



「なんだ、さぼりかー?」

「そっすねー、さぼりっす」



海の前に畑があるなんてへんてこな街だと思いながら、せっせと耕している腰の曲げたじいちゃんがのんきに伸ばしてきた声に返事をする。
晴れているおかげで畑に生息している生き物たちはさぞご機嫌だろうに、なんて見えない畑の奥をやんわりと想像しながら通り過ぎた。



9時5分前に昨日の場所に原付を止めて、堤防によじ登った。
朝9時に堤防にいるのは俺みたいなさぼりか、畑のじいちゃんくらいしかいないものだ。





キラキラと、言葉で表すには表しきれないその景色に、言葉を失った。


太陽を反射させる青を見て、俺は呆気にとられていた。
それから、はっとしてスマホをポケットから取り出して昨日とったパレッドの写真を開いた。




「………確かに、海だわ」



それでも、足りない。

もはや黒だろなんて思っていた昨日とは全く違う景色に、それから自分で作り上げた5色を重ねて、これをこうすれば、ここにあれを足せば、なんて脳内で新しい色ができていく。