スマートフォンというものは便利なもので、行きたいところへ音声で案内してくれるもんだから馬鹿でも絶対目的地にはたどり着けるようになっているんだろう。
原チャリで1時間以上もかかったたどり着いた頃には、海は青色どころか真っ黒で、5色なんて嘘みたいに波音だけがここが海だと囁いているようだった。
時刻は19時20分。
「……これのどこが青だよ」
空の色と比例するなら、それは確かに黒なのかもしれない。
黒というよりは青よりの、鉄紺色と言えばいいだろうか、まあ、どっからどう見ても一色にしかならないそれを見ながら、ため息をついた。
行動に起こすのが遅すぎた、この時間じゃ海は一生空と同じ色の認識のままだ。
「──ねえ、海は青いよ?」
ふと後ろから投げかけられた声に眉間にしわを寄せて振り返れば、見たこともない制服を着ている女子高生らしき女が裸足で立っていた。