親父からパクったライターで線香花火の先に火をつける。
太陽の下で花火をするなんてことはこいつと以外ありえないんだろう、ナツという名前だけ知っている彼女の瞳に映っているオレンジをぼうっと眺めていた。
「くーた」
「うん?」
「夏は、今日で終わりっぽい」
「…そーなんか」
「くーたも、しばらくここには来ないんでしょう?」
「そうだな、完成したら迎えに来てやるよ」
「……うん、楽しみにしてる」
線香花火の寿命は短い。
じっとそれだけに集中していても、最後まで続くことは、ほぼない。
ぽとり、オレンジが落ちる。
明るい世界の中でも、線香花火は綺麗に映ることを知った。
おそらくこれは、俺とナツしか知らない発見だと思う。
「海になりたいな」
「なんだそれ」
「ずっと綺麗なまま、輝いてるでしょう、いつみたって違う色をして、誰かが来るのを待ってるの」
「………、」
「海はなくならないから」
ナツの言うことは、最後まで半分くらい理解できなかった、
ナツだってアホなくせに、俺も大概アホなのかもしれない。
「もう行かなきゃ」