「…半分、あげます」
「え、」
「甘いもの食べて、元気出してください」
カップケーキを半分割って、目の前の先輩に差し出した。
先輩はぎこちなくそれを受け取って、ありがとう、ってつぶやいた。
「朱莉ちゃんはかっこいいね」
「、どういう意味ですか」
「こんな情けない年上の男のこと、励まそうとしてくれてるんでしょ」
「…情けなくなんか、ないです」
半分あげたカップケーキ。
上に載っているホワイトチョコがいつもより甘く感じた。
「隼人せんぱいは、いつも彼女さんのこと想ってる、かっこいい先輩です、」
わたしの精一杯。
握りこぶしを膝の上において、それからぎゅっと俯いた。
「…朱莉ちゃんはほんと、優しいね」
わたし、全然優しくなんかないです。
先輩が失恋して落ち込んでいるのに、もしかしてチャンスが回ってきたんじゃないかなんて考えてます。
先輩の弱みに付け込んでしまえば、わたしのことひとりの女の子としてみてもらえるんじゃないかって、思っちゃうんです。
「…っ、せんぱい、」
「帰ろっか、そろそろ」
好きです、
言わせてくれないのは、わたしがそう言おうとしてることわかってるからですか?
自分がその気持ちに応えられないからですか?
「…はい、」
それでも気持ちを伝えるなんて私には無理だった。
ぐいぐい押してしまえば、先輩はもっと私から遠ざかってしまうでしょう?