──…・


「鈴本、申し訳ないんだけどもう一時間残ってもらえる?」

「え、」

「ひとり今日欠勤でさあ、頼む!」



16時を過ぎて、人がちょっとずつ増える。

このお店のピークは近くの高校と大学が終わるこの時間からで、お店は少しずつバタバタしていた。




「いいですよ、」


別に帰ったところですることはひとつもない。

七時間のうち一時間が休憩だから、あと二時間くらいは働く元気も残っていた。



「あがりは桧山と同じ18時で頼むわ!」


それって、わたしにとってラッキーでしかないですよ、店長。

心の中で小さくガッツポーズをとって、だからと言って帰る方向は別だし特に何もないんだけど、滅多に時間が被ることがないからうれしかった。



「朱莉ちゃん、平気?」

「全然平気ですよ」

「無理しないようにね、ロングって結構きついし」



いつも8時間マックスで働いてるセンパイが何言ってるんですか、

なんて思いながら、やっぱり私より手際のいい先輩は、レジの注文を聞いて素早くドリンクを出していた。




「お客様こちらへどうぞ」



わたしが一番得意なのはレジだから、残りの2時間ひたすらレジをしていた。

いつも17時上がりのわたしは、木曜日の17時台がこんなにも忙しいなんて、知らなかった。