「だって、家から近いから」
「あー、近いのが一番だよね結局」
先輩はいつもバイクに乗ってここまで来ている。
従業員の駐輪場にはいつも黒色のバイクが止めてある。
「先輩はバイクでどれくらいなんですか?」
「俺は駅方向に15分くらいかな」
電車だと二駅分くらい、
新しい先輩の情報をゲットして、そうなんですね、と返事をする。
「じゃあ、ごゆっくり」
ひらひらと手を振って、それからお店に戻っていった。
カフェラテを砂糖を入れないまま口にする。
やっぱり苦くて、おもわず顔をしかめた。
それから角砂糖をふたつそこに落として、ティースプーンでゆっくりとかきまぜた。
先輩のつくるサンドイッチはいつもおいしい。
サンドイッチなんて具とパンを挟むだけなのに、先輩のサンドイッチは、味付けがちょうどよくて、挟まっているたまごの塩加減とか、レタスとパンのあいだのマヨネーズの量だって多すぎなくてちょうどいい。
濃い味があんまり得意じゃないんです、って言った日から、先輩は少しずつ味付けを変えて私のためにサンドイッチをつくってくれる。
先輩のことが好き。
もう2年も片想いしている。
でも、この気持ちを別に伝えたいっていう気持ちはないし、そんなの先輩を困らせるだけって、わかっているから言わない。