「じゃあ俺がドリンクつくってあげるよ、何がいい?」

「あー、じゃあ、カフェラテで」

「いいよ」

「もう休憩はいいんですか?」

「うん、もう十分かな」



そう言って腰にブラウンのエプロンを巻き付けて、バックルームの扉を開けた。



「アイスとホットどっち?」

「あー、ホットで」

「おっけい」



パタン、閉じられた扉の音を聞いてそれから、わたしはそっと息を吐きだした。





桧山隼人せんぱい。

わたしよりも2歳年上で、わたしより2年先にここで働き始めた先輩。

わたしの研修はもっぱらこの人で、彼が初めて研修したのはわたしだったらしい。



明るすぎないダークブラウンの髪と、落ちついた雰囲気、少し吊り上がった猫目と長い睫。



─はじめて会ったときから、どうしても大人に見えてしまう先輩に、ずっと惹かれている。